「えっ、これどうやって作るんですか?」
先日、ある中小企業を訪れた時、出されたサンプルを見て思わず、そう聞いて
しまいました。それは板金プレスでありながら、まるで樹脂成型品のような
複雑な形状をしていました。
私も設計を20年以上やっていたので、およそのモノは見ただけでどうやって
作るのか分かるのですが、その時はしばらく考え、その後、その会社社長に聞いた
ところ、だいたいそのプロセスを当てることができました。
その時ふと思ったのです。こんな設計は普通しないよなと。最近はCADにて設計を
行うことから、完成形は判ったとしても、それをどう作るかはビジナー設計者だと
意外に頭に入っていないことがあります。このため、完成形だけではなく、それを
どう作るかも頭に描きながら設計するように、常に教えていたものでした。
でも、上述の複雑なモノを見て、こう思ったのです。
・容易に作れるように設計する⇒ 誰でも作れてしまう。
・出来そうにないけれど、要求があるため図面を描き、できる企業を探す
⇒ 一部のプロと言われている企業は、それを成し遂げる。
このような構図も成り立つのではないかと。作り易い設計だけが全てではない。
設計経験が長いにも係らず、思わずビリビリ!とした瞬間でした。
日本のモノ作りに於ける価値、そしてこれから生きる道も、意外にこのような
ところにあるのかもしれません。また、複雑だからコストが高くなるかと言えば、
最近の技術がそれをカバーし、いろいろなメカを構築することでツギハギ製品より
安価にできることもあるようです。
既成概念でとらえることの恐ろしさを思い知らされた一日でした。