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Better Place社によるバッテリー交換方式

Better Place社によるバッテリー交換方式

 Better Place社の破綻について思うこと 

2013年5月26日、バッテリー交換方式を提唱していたBetter Place社が裁判所に会社の解散と清算を申し出た。これについて考察してみたい。 

・バッテリー交換方式が生まれてきた背景

 Better Place社は2007年10月に創業している。創業者のシャイ・アガシ氏はSAPでの経験を元にEVのバッテリー交換をメインとする新ビジネスモデルを構築しようとした。当時(現在もそうであるが)、EVは1回の充電にて走行できる距離が短く、長くしようとすれば多くの電池搭載を必要とし、レイアウト面・コスト面から課題を抱えていた。これに対し、アガシ氏はバッテリー交換ステーションにてバッテリーパック毎交換する方法を用いれば、数分にて対応可能となりユーザーの利便性が高まると考えた。

・バッテリー交換方式の利点と課題

 バッテリー交換といえば携帯電話やデジカメを思い浮かべるが、クルマに適用する場合、少し異なる事情がある。

<利点>

・近くにバッテリー交換ステーションがあれば、バッテリーパックの交換は2~3分と極めて短時間に実施できる。チャデモ方式の急速充電で15分~30分要するのに比べ、圧倒的に短い。

・Better Place社は、ユーザーがBetter Place社から電池を借り受け、走行距離に応じて使った分のみ支払うというビジネスモデルを構築しようした。これは携帯電話などのサービスで見受けられる方法でもある。 

<課題>

最大の課題は、自動車メーカーがバッテリー交換方式EVの開発に積極的になりにくい事情がある。つまり、自動車メーカーは、バッテリーの中身及びレイアウトが基幹部品であることから、競争領域と定めている。しかし、バッテリー交換方式では、あるEVのバッテリーパックはライフにて同じもを使用することを要求する。つまり、今後どれほど進化するか判らないバッテリーに於いて、競争領域で差異化出来ないような手法を自動車メーカーは嫌う。

・2番目の課題はバッテリー技術の進化にある。EV黎明期ではバッテリーが著しく進化し、例えば同じ車種でも1~2年後にはバッテリーサイズが2/3に縮小していることが考えられる。自動車メーカーであれば、マイナーチェンジのタイミングをとらえバッテリーパック設計を変更してしまうことは可能であるが、バッテリー交換方式のように形状やロック位置を決められてしまうことは自由度を失う。

・3番目は種別拡大への対応である。1つの自動車メーカーで複数のEVがある場合、バッテリーパックはマイナーチェンジも含めて多数存在する。ましてや多くの自動車会社がEVを市場投入する場合、バッテリーは極めて種類が多くなるが、それをバッテリー交換ステーションで保有することが可能かという問題に直面する。

・4番目は品質保証への懸念である。自動車メーカーは、バッテリーも含めたトータルで車両の品質を保証している。もしバッテリー交換した車両にて、衝突時にトラブルが発生した場合、最終責任は誰が負うかという懸念が生じる。自動車メーカーは、他にてバッテリーパックを交換しているため車両全体の責任を負いにくく、またバッテリー交換ステーションは単にバッテリー交換しただけだから車両全体の責任は負えないとなるのではないか。

・ビジネスモデルの破綻か

 アガシ氏がSAP AG出身であり、携帯電話と同様にEVバッテリーのプロバイダーを目指そうと目の付け所は良かったと思われる。しかし、現時点ではEVがまだ黎明期にありバッテリーそのものが著しい進化の途中にあること。従って、固定された形状、位置を要求されることに自動車メーカーは許容できなかったことにあると思われる。つまり、ベタープレイスの破綻は、そのビジネスモデルの破綻というよりも、携帯電話とは異なる、自動車が持つ特異性に起因しているのではないか。

 

・EVの発展は遠のいたのか

 昨年から今年にかけて、A123システムズの経営破綻、フィスカーオートモーティブの身売りなどのニュースが続いているが、これらによりEVの発展が遠のいたとは考えにくい。むしろ、1908年にT型フォードが大ヒットすると、瞬く間に米国には多数の自動車会社が乱立、そして淘汰されていったことと同じように映る。

EVの黎明期は多彩なアイデアが浮かび世の中に提案していく。その中でどう本流をつかんでいくのか、各企業には淘汰されないための眼力が試されているのではなかろうか。

better_Place

http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1305/27/news072.html

 

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