6月14日は、正直、打ちひしがれた一日でした。
というのは、千葉市美術館で開催されている『ドラッカー・コレクション 珠玉の
水墨画』展を見に行った時のことです。
ご承知のとおり、P.F.ドラッカーは30冊以上の著名な本を上梓し、「マネジメントの
父」と呼ばれていますが、一方では日本画の愛好家としても知られています。
このドラッカーが生前購入した水墨画を集めた展示会があるというので、行く前は
単にあちこちにある水墨画を集めたのではと、半分たかをくくっていました。
しかし、実際に行って見てみると、生涯を通じて、室町時代から江戸時代にかけて
200点以上の日本画を購入しており、今回はその中から111点が展示されているとのこと。
有名なものや貴重なものもあり、眼力の高さに驚かされたものでした。
また、購入する際も「真に語りかけてくるもの、家の中で共に暮らしたいと感じる
ものを基本に選んだ」とのことです。
多くの方からなぜ日本美術を収集し鑑賞するのかとの問いに対し、「正気を取り戻し、
世界への視野を正すために日本画を見る」と常々言っていたと妻のドリス・ドラッカーさん
は語っています。まさにこの文章を読んだとき、ビリビリ!とした瞬間でした。
ドラッカーは、日本画について、西洋絵画はルネッサンス以降に幾何学的となり、
中国絵画は代数的手法であるが、日本画は余白を重視するトポロジカル、つまり
位相幾何学的なことに特徴がある。そのため、空間を現実とみなし、視覚化する
ことでデザインを完成させていると考えていたとのこと。
さらに、ドラッカーの収集は江戸時代の禅画にまで及び、白隠禅師や他の禅師が描く
禅画に数多くのショックを受けたと語っています。
スティーブ・ジョブズが禅宗に傾注し、白隠禅師を尊敬していたことは伝えられて
いますが、今回の展示会で点と点が線で繋がったかのような感覚を覚えたものです。
同じ人間ですが、偉大な人は、時間・空間・国境を越えて、そこに心の拠り所を求め、
逆に我々は身近にいながら、感覚的にも鈍く、その良さにも気づいていないことに、
改めて打ちひしがれた一日でした。
また明日から気持ちを入れ直して挑戦ですね。